【記事最新更新日:2024年7月2日】
この記事では、ホテル業界の人手不足とその原因について、ホテル業界に特化した人材供給会社の立場から深堀りしてみました。
「ホテル業界はホントに人手不足なのか?」
業界に携わっている方や、ホテルの採用担当をしている方は、この記事で人手不足の実態と原因を知り、人手確保に向けて行動を起こしていきましょう!
↓動画でも解説しています!↓ ※動画は2023年収録・公開のものです
目次
人手不足とは?人材不足との違い
ここでは、人手不足がどんな状態のことをいうのか、また「人材不足」との違いについて、詳しく解説していきます。
ホテル業界は長年、人手不足が問題となっていますが、ここ数年で業界に大打撃を与えるほどの人口減少はありませんでした。また、2025年から少子高齢化・労働力人口の減少が加速する「2025年問題」が囁かれていますが、その中にも働き手は存在しているということです。
では、ここで人手不足の実態と、「人材不足」という言葉の意味について見てみましょう。
状況 | 原因 | |
人手不足 | 働き手が足りていない状況 ◯課題:人数不足 | 働ける人口の減少、人材不足の影響 |
人材不足 | 必要な能力・スキルを持つ人がいない状況 ◯課題:能力不足 | 求められる能力・年齢などの条件の水準が高い |
ホテル業界は、ホテルで働く際に必要となる能力・スキルを持つ人が少ない「人材不足」にあたります。本来ホテルで働こうと思えば働ける求職者自体はいるものの、ホテル側が求めるスキルの高さ故に人材不足に陥り、結果人手不足となっているのです。
では実際、ホテル業界はどれくらい人手不足なのでしょうか。
ホテル業界の人手不足とその現状
ここでは、2024年におけるホテル業界の人手不足の状況を紹介していきます。
ホテルはどのくらい人手不足なのか、実際のデータを参照して、自社の人手不足の状況と比較してみましょう。
ホテル業界の人手不足の割合
帝国データバンクの調査で、2024年4月における旅館・ホテルの人手不足は、71.1%にまで達していることが公表されました。全業種の中でも2位の人手不足で、コロナ禍が開け始めた2023年以降から顕著になっていることが、以下の表の前年度比較からわかります。
2022年秋から脱コロナで観光需要が回復しましたが、宿泊業が急激に稼働率も上昇回復、一方ホテル側の増員が追いついていないことから、人手不足はより深刻化しています。そのためホテルでは、外国人スタッフの雇用を積極的に行う傾向が出始めました。例えば、東京都・高田馬場のホテルでは、2023年に時給1350円で募集をかけたものの求職者が集まらず、外国人スタッフの採用に踏み切っています。
弊社ではホテル業界の人材不足解消のお手伝いとして、業界経験者の人材紹介を中心に行っていますが、コロナ禍明け以降には宿泊稼働率上昇に伴い、朝食・客室清掃の稼働需要が上がりました。また、宿泊稼働率上昇の原因の一つ・円安も2024年6月現在まで続いており、今後もホテルは人手の増員・確保が必須となるでしょう。
ホテル業界の人手不足が続く原因4つ
ここでは、ホテル業界の人手不足の原因を4つ解説していきます。コロナ禍以前からあるホテルの人手不足には、打開されずに続いてきた問題が様々あります。
その中でも特に影響の大きい原因を挙げていますので、ホテルの採用に携わる方は、現在の採用条件・現場の労働環境と合致しているかどうか、チェックしてみましょう。以下、①の見出しでは、SNSで上がっているホテル業界の人手不足に対する感想・意見も紹介します。
①賃金が低い
②求められる能力が高い
③勤務時間が不規則
④上記①~③に起因する、高い離職率
ホテルの仕事は接客業の中でも、接客・語学力において高いスキルが求められます。そのうえ、Xでも意見が上がっていたように、不規則なシフト・低い給与などの待遇から、「厳しい」「しんどい」イメージがあるのが現状です。業務・待遇のイメージ低下は、今後ホテルの人手不足を加速する恐れがあります。
①賃金が低い
ホテル業界は賃金が低い状況が長年続いており、業界全体の人手不足が解消されていませんが、本来人手不足とは「働ける人口・人数がいない」ことを指しています。給与を上げれば採用できる人がいるはずなのに、賃金据え置きの状態で人が集まらないことを、人手不足と呼んでしまっているのです。
2024年2月にエヌエヌ生命保険が発表した調査(対象:全国の中小企業経営者7232名)によると、「2024年度中の賃上げを予定している」と回答した旅行関係事業経営者は、31.0%でした。賃上げをしない、または検討中である企業が69.0%と大部分を占めており、今後も一部のホテルを除いて、低い賃金の据え置き状態は続く見込みです。
以下は、2023年9月に投稿されたホテルの賃金に関するXの投稿2件です。
賃金の低さはホテルに限らず、宿泊業や飲食業、介護・保育業界にも言えることです。長年人手不足と言われ続けている業界では、給与の変化がなく、求職者が集まりにくい状況を作っています。また、年々上がる物価や消費税率など、時代の流れに沿わず、あまり大きな変化のない給与設定も原因の一つといえるでしょう。
なお、一部のホテルでは新規人材確保の一環として、新入社員や全社員の基本給の引き上げに取り組んでいます。以下は、2024年4月に基本給の引き上げを行ったホテルの一例です。
●2024年4月に基本給の引き上げを行ったホテル(一例)
2023年以前 | 2024年4月以降~ | |
星野リゾート | ・大卒社員:214,800円 ・高卒社員:171,900円 ・短大・専門学校卒社員:188,000円 | ・大卒社員:240,000円(前年度から11.7%引き上げ) ・高卒社員:180,000円 ・短大・専門学校卒社員:200,000円 |
西武・プリンスホテルズワールドワイド | 全社員約6,000名の基本給:平均3.6%引き上げ ※若年層については最大7.3% |
基本給を上げることは企業にとって大きな決断であり、リスクに繋がる恐れもありますが、将来入社してくる優秀な人材の確保の先行投資として欠かせない対応でもあります。
②求められる能力が高い
ホテルの仕事は求められる能力が高い場合が多く、そのうえ賃金もさほど高くないという課題感が「人材不足」による人手不足を起こしている可能性があります。実際、現在のホテルの賃金で働きたい求職者はいるものの、ホテル・企業側が求職者の年齢・スキルの問題で、応募・選考を断るケースが多いのが現状です。
過去に接客経験がある人でも、ホテル業界未経験者であれば、書類選考の時点で落とされる可能性は高く、年齢が高くなればなるほど採用確率は下がります。そのため、ホテル業にどうしても従事したい場合には、求職活動をする前の時点から求職者個人で、ホテル従事に向けてのスキル習得をしておく必要性があるでしょう。
ホテル業界を含めた「おもてなし業界」の仕事には、人手を掛けるという暗黙の了解があります。そのため、それだけきめ細やかで質の高い対応が必要となり、求職者に対しても即戦力となるようなスキル・経験を求められます。
③不規則なシフトと少ない休日日数
ホテルでの勤務は朝・昼・夜間・深夜から早朝など、不規則なシフトが多く、従業員の負担が多いのが課題です。また、人手不足の影響から繁忙期になると、従業員の残業が増えたり、連休を取りづらい状況ができてしまいます。ホテルでは、休日日数が少ないことも課題となっているのです。
平成30年における年間休日日数の平均値は107.9日でしたが、宿泊業は業界全体で最も低い97.1日でした(厚生労働省「平成30年就労条件総合調査」より)。
また、有給取得率については、宿泊業の有給取得率は労働者一人当たりの平均取得日数が6.7日、平均取得率は49.1%でした(厚生労働省『令和5年就労条件総合調査』より)。これらの数値は全業界の中でもワースト1位で、ホテル業界の離職者が多い原因の一つです。
また、「7日間以上連勤をした」など、ホテルの人手不足を補うために過酷な労働をしている従業員もいます。以下は、12日間連続で勤務した従業員の一例です。
法律では週1日は必ず休日を取るよう定められていますが、7日間連続して勤務することは法に触れません。例えば、日曜日を週の初めとして見た場合に、以下のような働き方をしても週1休みにはなっているため、法的に問題ないとみなされてしまいます。
このように負担の多い働き方をしている従業員がいることも、ホテルの仕事のイメージダウンに繋がってしまいます。そのためホテル側は、従業員が元気に働けるよう、勤務日・休日のバランスが取れたシフトを組める労働環境を整える必要があるでしょう。
④上記①~③に起因する、高い離職率
厚生労働省が発表した『令和5年上半期雇用動向調査結果の概要』によると、宿泊業・飲食サービス業の離職人数は2022年に728.6千人、2023年に792千人。2022年の離職率は14.8%で、全業界の中では1位の「生活関連サービス業、娯楽業」15.0%に次いで2位の離職率となりました。
以下は、2022年・2023年の宿泊業・飲食サービス業における、入職率と離職率のグラフです。
ホテルを含めた宿泊業はいずれも、過酷な労働条件や低い賃金、求められるスキルの高さなどが起因し、入職者がいてもその大半が離職してしまう現状があります。離職率を下げ、勤続する従業員を増やすためには、採用条件のほかにも就労中の待遇・労働環境の整備を行っていくことが必要不可欠です。
ホテルに勤続している従業員のやりがいとは
ここまで、ホテルの人手不足の原因と離職率の高さについて解説してきましたが、その一方でホテルの仕事が好きで、勤続している従業員も存在します。
以下は、実際にホテルで働いている従業員が述べた、ホテルの仕事に関する感想です。
様々なお客様との出会いがあるのが魅力です。お客様に自分の名前を覚えてもらえたときや、フロント業務が立て込んだときにスタッフで連携して乗り越えたとき、ホテルの仕事にやりがいを感じています。
ホテルのレビューに自分個人の名前が掲載されていたときは、とても嬉しかったです。
ホテルの仕事にやりがいを感じるのは、業務に関する学習の成果が仕事中に発揮できたとき。あと、お客様と仲良くなれたときです。
ホテルによっては海外のお客様との出会いも多く、私生活では出会えないような人と交流できるのが、ホテル業の魅力の一つです。給与・待遇面で離職してしまう従業員もいる中、上記口コミのように、ホテルの仕事が好きで続けている人がいる事実があります。
従業員が仕事を楽しく続けていける環境を整備し、離職率を減らせるよう、ホテル側は工夫をしていきましょう。具体的な対策については、以下の見出しで解説します。
ホテル業界の人手不足を解消する方法5つ
ここでは、実際にホテルの人手不足を解消するための方法を5つ紹介していきます。現場の労働環境や雇用条件を整えて、人手を確保していきましょう。
①従業員の働き方・待遇を見直す
②専門的なスキルを持つ従業員を育成する
②ITシステムを導入し生産性を上げる
③外国人採用を強化する
④人材を外部から調達する
① 従業員の働き方・待遇を見直す
ホテルの人手不足の大きな要因は、低い給与とシフトの不規則さ・過酷さによる離職率の高さにあります。従業員それぞれが持っているスキルに合わせた役割分担をおこない、無理のない働き方ができるよう現場を整え、求職者にも働きやすい職場をアピールしていくのがよいでしょう。
また、いきなり給与を上げることが難しい場合であっても、例えば連勤日数が多くなりすぎないように調整したり、勤務する時間帯にばらつきが出過ぎないように配慮するなど、従業員の心身の健康を気遣う姿勢を見せることで、社員の離職防止に繋がります。例えば、企業向けに提供されている勤怠管理サービスでは、連続勤務日数の上限を設定し、上限を超えないよう従業員の勤怠を管理する事ができます。
②専門的なスキルを持つ従業員を育成する
高いスキルを求められるホテルにおいて、専門的なスキルを持つ従業員は貴重な存在です。選考の時点でスキルを持つ求職者を採用できるのがベストですが、既存の従業員も育成しつつ、現場の人員不足を補っていきましょう。
選考・採用時 | 既存社員への対応 |
---|---|
・すでに専門的なスキルを持っている求職者を採用する ・未経験でも、積極的にスキルを身に着けたいと思っている求職者を採用する | ・より高いスキルを身につけるための研修を随時行う ・業務および研修マニュアルを、より効果的なものにアップデートしていく |
いずれもポイントになるのは、従業員がホテル業務に積極的になれるかどうか、スキルを積極的に身に着けていく姿勢があるかどうかです。単純に従業人の数を増やすだけではなく、一人一人の対応力を上げることは、時間や働き方に余裕のある現場を作ることに繋がります。
新規従業員の採用に関して言えば、最初から高いスキルを持つ従業員だけを求めていると、どうしても人手確保に時間がかかり、人手不足の状態が続いてしまいます。もしいま業界経験者だけに絞り人手不足に悩んでいるのであれば、将来の人手になることを見越して未経験者を採用し、教育することも検討してみましょう。
※従業員のやる気について知りたい方はこちらの記事もおすすめ→ 記事と動画で解説『やる気のない社員の特徴・原因について|現場環境を改善する3つの方法』
③ITシステムを導入し生産性を上げる
2024年現在、ホテル業を含めたサービス業全体で、ITシステムの導入が積極的に行われています。例えば、国内のみならず全世界にも展開している「変なホテル」は、ほぼ無人でロボットメインの受付・接客サービスを提供するホテルとして有名です。
配膳・清掃ロボットや受付専用の機械を導入すると、ホテル全体の生産性が上がり、人手不足解消や人件費削減に繋がります。また、従業員の時間に余裕ができることで、従業員の教育やスキルアップに時間を割き、ホテルのサービスのクオリティアップができるでしょう。
弊社では、清掃・配膳業務を代行するサービスロボットレンタルについて、ご相談を受け付けております。
●レンタル可能なロボットの種類(一例)
・音声認識機能に優れているロボット
・障害物を避けて走行する機能に優れているロボット
・お掃除ロボット
レンタル方法など詳しい内容をご希望の場合は、以下までお問い合わせください。
●サービスロボット お問合せ先
株式会社バリュースタッフ 東京本社 サービスロボット担当
03-6826-3377
④外国人採用を強化する
日本人の採用にこだわらず、求職中の外国人採用を強化しましょう。国内には、日本で就職して在日し続けたい人や、日本に留学している間だけ働きたい人など、様々な境遇の外国人が暮らしています。短期や長期、いずれの雇用条件にも当てはまる人材がおり、高い言語スキルを持つ人もいるため、ホテルの人手不足解消が期待できます。
なお、在留している外国人を正社員雇用するためには、求職者が以下いずれかに該当している必要があります。
~外国人がホテルで正社員として勤務する条件~
- 就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」を所持していること
※ただし上記ビザ対象となる専門的な業務のみ可能。単純作業や清掃業務などは禁止されている - 特定技能1号(分野「宿泊業」または「外食業」)を所持していること
※取得している特定技能の分野に応じた業務のみ従事可能 - 在留資格のうち「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」いずれかを所持していること
もし上記の条件を満たさずに外国人求職者の就労を認めてしまった場合、ホテル側は「不法就労助長罪*」を犯したとみなされ、懲役または罰金の対象となります。
また、ホテル側は外国人を雇用または離職を認める際、雇用対策法第28条に従い、正社員・アルバイトなど雇用形態を問わず、ハローワークに届け出をする必要があります。
外国人の雇用をする際には、雇用する外国人の滞在に関する情報のチェック、そしてホテル側での書類提出を漏れなくするよう心がけましょう。
*出典:警視庁HP「外国人の適正雇用について」
※外国人のアルバイト採用に興味がある方には、こちらの記事がおすすめ→ 動画で解説『外国人留学生のアルバイト採用の基礎知識3選』
⑤人材を外部から調達する
外部から人材を調達すると、採用活動にかかるコストを削減でき、自社のみで募集をかけるよりも多くの人材に出会える可能性があります。特に、ホテル業界に特化した人材紹介会社を利用すれば、ホテルで働きたい求職者や経験者と繋がりやすく、離職率の低さも期待できるでしょう。
もしホテルの人材をお探しでしたら、ホテル・ブライダル業界に特化した弊社の人材紹介サービス「バリプラNext」にご相談いただくのがおすすめです。ホテルの人手不足にお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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まとめ
ホテル業界の人手不足の現状、原因と対策について解説しました。
ホテル業界では、20年前から2024年現在まで人手不足の状態が続いています。また、コロナ禍明けのオーバーツーリズムや円安・ホテルの乱立がある中、高いスキルや経験のある人材が不足していることによって増員ができず、今後ますます人手不足になる可能性があります。
ホテルの人手不足の原因は、主に以下の4つです。
①賃金が低い
②求められる能力が高い
③不規則なシフトと少ない休日日数
④高い離職率
これらの原因を解消するために、以下5つの対応策を実行していくのがおすすめです。
①従業員の働き方・待遇を見直す
②専門的なスキルを持つ従業員を育成する
③ITシステムを導入し生産性を上げる
④外国人採用を強化する
⑤人材を外部から調達する
今後、日本が観光立国として進んでいく中で、AIやロボットなどでDC化や自動化が必要になってきています。テクノロジーの活用によって、人にしかできないおもてなしのよさを提供できる、「生産性の高い人材」を増やしやすくなるでしょう。
従業員の負担を減らして働きやすい現場を作りながら、賃金を含めた条件や、教育・育成の体制の改善を行っていきましょう!
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